Sigmaボンドテスター アプリケーション例
ワイヤープルテスト/リボンプルテスト

XYZTEC

ボンディングワイヤ・リボンのプルテスト

1.ワイヤープルテストとは?

ボンディングワイヤ・リボンのプルテスト

ボンディングワイヤに上向きの力を加えて基板・ダイから引きはがすテストのことで、その目的は米軍規格(MIL-STD-883 2011.9)では、 "接合強度測定、強度ばらつきの評価、合否判定を行うこと“と規定されています。 多くの場合、抜き取りによる破壊試験が実施されますが、一部ハイエンド製品では非破壊試験も実施されます。 XYZTEC社製Sigmaボンドテスターは破壊・非破壊テストのいずれにも対応します。


2.ワイヤの種類

リボン用フック
リボン用フック

材質は、最も一般的な金、パワーデバイスで使用されるアルミ、コスト削減のために採用が拡大している銅・銀の4種類で、合金タイプもあります。 アルミワイヤには太線・細線が存在していますが、一般的には75μm以下のワイヤは細線、それ以上の径は太線と呼ばれます。 アルミリボンは通常のプルフックが使用出来ない場合、特殊形状・材料のフックを使用します。 材質、線径により想定される破断強度が大きく異なりますが、Sigmaボンドテスターは6種類のセンサーを回転ヘッドに搭載可能なため、ロードセルの付け替えなしに各種ワイヤのテストに対応します。

3.ワイヤプルテストの条件設定

ボンディングワイヤのプルテストに限らず、ボンドテストを実施する際の黄金律として、XYZTEC社では下記3点を常にアドバイスさせて頂いております。

黄金律その1: 測定の目的にかなった破壊モードを得られる期待値が高い測定方法を採用してください。

黄金律その2: サンプル形状・その他諸条件によりその破壊モードを得ることが出来ない場合、実際の使用環境で想定される応力をかけることが出来るテスト方法を採用してください。

黄金律その3: 最も高い荷重を記録する方法を採用してください。

これら3つのポイントを考慮し、テスト方法を設定し、フックの選定を行います。

4.プルフック

プルフックのフック部(ワイヤを引掛ける部分)の径は、測定対象のワイヤ径の3倍を目安に選定します。 細すぎる場合、ワイヤ自身の破断が先行し、ボンドの接合状態を正しく評価することが出来ない恐れがあります。 但し、現実問題としてデバイスのデザイン、ループ高さ、ボンドピッチ等の条件により、細い径のフックを使用します。

フック部の長さはワイヤ径の3~3.5倍が目安ですが、ファインピッチのデバイスではこれよりも短いものが使用されます。

プルフック径

プルフック径は、ワイヤ径の3倍を目安に選定します。


プルフック 先端部

先端部はワイヤの脱落を防止するため、直角ではなく85°前後に加工されています。


特殊なツール

極端に低いループのワイヤやリボンを測定する必要がある場合、特殊なツールを用意します。 またはプルテストの代替手段として、ツィーザープルテストを実施します。


5.プルフックの芯出し

Sigmaボンドテスター用プルフックホルダー
Sigmaボンドテスター用
プルフックホルダー

測定作業を効率よく進めるにはフックの芯出し調整が正しく行われていることが重要です。 芯出しが行われていないフックでは、測定場所への位置合わせに時間がかかるだけでなく、θ回転時に位置が大きくずれるため、測定対象のワイヤのみならず隣接するワイヤを変形・切断してしまう恐れがあります。 XYZTEC社のプルフックホルダには芯出し用のイモネジが装備されており、作業者にて調整可能です。


プルフックの芯出し

芯出し調整が正しく行われていないプルフックを回転させると、隣接するワイヤを曲げたり、2本引掛けてしまうなどのミスが発生します。

6. プルフック交換の目安

金線・アルミ細線用のプルフックは先端が細く、1) サンプル交換時にハンドリングミス、2) ステージの操作ミス、3) ロードセル交換時、に破損する可能性が高く、取扱には注意が必要です。

XYZTEC社のSigmaは回転式測定ヘッドに最大6個のセンサー(ロードセル)を搭載可能で、作業者によるロードセルの付け替え作業は不要です。 このため、ロードセル交換時のツール破損の恐れはほぼ皆無です。 また、プルフックはフックとフックホルダが分離されており、フックのみ交換することが可能なためランニングコストを抑えることが出来ます。 これにより、フックの芯出しも作業者が実施出来るため、誤ってプルフックを曲げてしまった場合でもそのフックを再利用できる可能性があります。 但し、下の図のように変形した場合、測定結果に影響が出たり測定が不可能となることもありますので交換をお奨めします。

変形したプルフック
このように変形したプルフックは交換を推奨いたします。

7.プルフックを引掛ける場所

プルフックを引掛ける場所

米軍Mil規格では、1stボンド(ボール)と2ndボンド(ステッチ)の中間点にフックを位置合わせしてテストを実施すると規定されています。 (補足:最新のMil規格883では、中間点とループトップの間と変更されております。) 一方、特別な目的をもってプルテストを実施する場合ですが、例えば1stボンドの接合強度を確認したい場合はフックをボールの近くに、2ndボンドの強度を確認する場合はステッチの近くにフックを配置しプルテストを実施します。

プルフックを引掛ける場所

1stボンドまたは2ndボンド寄りにフックを配置することもあります。

いずれの場合も、毎回同じ場所にフックを配置することが重要です。 フックの場所が変わることにより強度・破壊モードが変わる可能性が高いため、作業者は注意が必要です。


8.ワークの固定方法による測定への影響

ワークの固定方法により測定結果が異なる可能性があります。 測定中にサンプルが浮き上がることでテストに余計な時間がかかります。 テストに余計な時間がかかるということは、実質的にテスト速度が低下していることを意味します。 テスト速度が変わることで、テスト結果が異なってくる可能性があります。 また、ワイヤのシェアテストではシェア高さがばらつく可能性が高く、プルテスト以上に影響を受けます。 XYZTEC社のSigmaボンドテスターでは各種ワークホルダをご用意しており、またカスタム対応も行っております。

9.破壊モード

プルテストの結果は、強度のみならずその破壊モード(壊れ方)も重要な情報です。 強度が合否基準を上回っていても、出現した破壊モードによっては不合格判定されます。 XYZTEC社のSigmaボンドテスター用ソフトウェアでは、ユーザーの使用実態に応じて破壊モードの設定変更が可能で、名称の編集、破壊モードによる合否判定、ジョイスティックボタンへの割り当てを自由に変更することが出来ます。
ワイヤのプルテストでは下記破壊モードが出現します。 名称は一例です。 ユーザーによっては過去の慣例から、A、B、C・・・等の名称が使用されています。 XYZTEC社製ボンドテスターでは、各破壊モードに任意の名称を登録することが可能ですので、従来の管理方法を変える必要はありません。

ミッドスパン ミッドスパン。 最も一般的な破壊モードですが、プルフック径の選定が正しくない(細すぎる)場合もこの破壊モードが頻出しますので注意が必要です。 アルミ太線では多くの場合この破壊モードとなるため、ボンド部の正しい評価のためツィーザープルテストが代替の方法として採用されております。
ネック切れ ネック切れ。 海外では、溶接用語であるHAZ(Heat affected zoneの略語。熱影響部)と呼ばれることもあります。
ヒール切れ ヒール切れ。
ボール剥離

ステッチ剥離
ボール剥離、ステッチ剥離。ワイヤボンダーのボンディングパラメーターの見直しを検討します。 また、パッド表面の汚染、ワークの不十分な固定が疑われます。
ボール剥離

ステッチ剥離
クレータリング。通常、ワイヤボンダーのボンディングパラメーターやキャピラリー選定の見直しを検討します。

Sigmaボンドテスターでは、測定後に破壊モードを入力する画面が表示されます。 作業者は画面を見ながら破壊モードを選択できますので、入力ミスの防止に効果的です。 また、一般的には量産現場ではプロセスが安定するため、特定の破壊モードが頻出します。 頻出する破壊モードはジョイスティックのボタンに割り当てることが出来るため、作業者はマウス操作等で測定作業を中断されることがありません。

10.ボールシェアテスト/ウェッジシェアの重要性

通常、プルテストだけではなく、ボールシェアテスト/ウェッジシェアテストも実施します。 XYZTEC社ボンドテスターは回転ヘッドにプルセンサー、シェアセンサーを自由に組み合わせて最大6個まで搭載可能ですので、作業者がプルセンサー、シェアセンサーを手作業で付替えることなく、ソフトウェアにてセンサ―を選択することでセンサーの切替が完了します。 また、ワイヤのシェアテストで使用される100gf、1kgf、10kgfシェアセンサーはセンサーが360°回転しますので、従来ワークホルダを回転させることで行っていたシェアツールとサンプルの平行出しが不要になり、特にアルミ線のウェッジシェアテストで大幅な時間短縮を実現します。

回転式シェアセンサ(アルミ線ウェッジシェア)

回転式シェアセンサ

ボンディングワイヤの品質評価に最適なボンドテスター

Sigma

オランダXYZTEC社製ボンドテスターSigmaは、回転式測定ヘッドに異なるセンサー(ロードセル)を搭載可能。 作業者によるセンサーの付け替え作業無しに、測定種類(プル・シェア)の切替、異なるレンジのセンサーへの切替に対応します。 作業者負担の軽減、センサー・プルフック・シェアツールの破損防止に大きな効果があり、世界中の生産ラインの作業者、プロセス技術開発担当者より高い評価を得ております。
プル、シェアのみならず、ツィーザープルテストユニットも回転式測定ヘッド内に内蔵可能。 また、回転式シェアセンサーにより、ワークホルダ側のθ回転によるツールとワイヤの平行出し作業が大幅に簡略化され、絶大な時間短縮効果を得ることが出来ます。

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