Section02 業界ニュース
装置メーカーから見たパワーデバイス市場未来予想図 Ⅳ
~次世代デバイス SiC/GaNはいつ普及する?~
今回は次世代デバイスといわれるSiC(炭化ケイ素)及びGaN(窒化ガリウム)の動向を考察してみます。
これまで、このWEBマガジンで紹介いたしましたように、近年のハイブリッド車や電気自動車の普及、また電化製品のインバーター化などによる化石燃料使用量削減への積極的な取り組みにより、次世代デバイスのさらなる需要が見込まれています。
これらの装置やシステムにおいては電力変換を頻繁に行う必要があり、その効率的な電力変換を実現しているのがパワーデバイスです。
パワーデバイスは、発明当初からシリコンを用いて製造されていましたが、近年製品の性能に対する要求レベルが高くなってきています。 当面はシリコンパワーデバイスへの需要が根強いとみられていますが、高性能製品の要望が高まるにつれ、シリコンパワーデバイスの性能の限界がくると考えられています。 そのため、次世代のSiCやGaN等のワイドギャップ半導体も用いて、パワーデバイスでさらなる高性能化を図る動きが台頭してきました。 では、シリコンパワーデバイスとの性能的な違いはどれくらいあるのでしょうか。
一例ですが、シリコンでは、Siパワー半導体(MOSFET)のオン抵抗を10mΩcm2にまで下げたときの、耐圧の理論限界は120Vとなります。 それに対しSiCにおいては、Siと同じ10mΩcm2までオン抵抗を下げたときに耐圧が1200Vと高く、GaNでは1600Vに達します。 そしてSiと同じ耐圧であれば、オン抵抗を大幅に引き下げることができます。 そのためにSiを用いたパワー半導体をSiCを用いたパワー半導体に置き換えたとすると電力損失を90%以下に削減できます。 電気自動車や効率的な自然エネルギーを利用した発電機では、このような性能を実現するためにパワーデバイスの性能向上が必要急務になっています。
それでは、次世代デバイスはどれくらいの規模で成長していくのでしょうか。 予想は難しいところですが、SiC系パワーデバイスは2012年実績で約76億円規模で、GaN系はまだある一部のユーザーのみの販売となっています。 そのため、2012-2013年の統計ではで市場形成に至っていないのが現状です。 しかしながら2014年以降は各市場とも拡大する見込みで、SiC系パワーデバイスは約110億円、GaN系パワーデバイスは約5億円程度と予想されています。またSiC系では早ければ2014年初頭にも6インチ基板を商業ベースで利用し、量産化が本格始動することが予測されています。低コスト化に伴い、需要が高まれば2020年で800億円規模に成長するかもしれません。しかし成長が確実な分野ではありますが、各製造工程にはまだ解決しないといけない課題があり、この問題解決のスピードが市場拡大の重要なポイントとなります。
SiC/GaN採用においては種々の問題がありますが、新材料に対応する問題点としては、①耐熱性向上 ②放熱性向上 ③大電流への対応 ④低温接合などがあります。 ワイヤーボンダメーカーとしては、SiCデバイス等の高電圧・大電流による性能劣化やワイヤーの溶断に対応する必要がありますが、弊社ではすでに高電圧・大電流に適した銅ワイヤボンダ・リボンワイヤボンダをリリースしています。 引き続き評価実験を行い、近い将来到来する次世代デバイスの量産化に対応できるよう、開発改良を日々続けております。