Section01 業界ニュース
ボイド低減を見据えたVPSリフロー装置
1.はじめに
電子部品実装のPbフリー化に伴い、リフローにおけるいくつかの課題があります。
1つは最大温度の制約であり、これまでは融点180℃近辺のはんだを使用していた為、部品の耐熱許容温度(多くの場合235℃~240℃)以内でリフローすることができました。
2つ目は部位による温度差の問題であり、予熱ゾーンを増やしたり炉内の熱の対流方法を工夫したりする事で対応されてきました。
これらの問題点を解決する別の方法がVPSリフロー装置を用いることであり、それにより、新たな効果も確認する事ができました。
それが、ボイド低減です。(ビデオファイル参照)
VPSでは、蒸気雰囲気により暖められた空気(ボイドの原因となる気泡など)は膨張して気圧の低い方へと逃げてゆきます。
基板と部品に挟まれたボイドはベーパー雰囲気で十分粘度が低くなったはんだを押し退けて接合面から逃げ出します。
この性質をうまく引き出すプロファイルを作成することでボイド低減が可能と考えられます。
ボイド低減実験
2.VPSリフローとは
(1)特長
現在広く利用されている対流式リフローとは異なり、不活性熱媒を沸騰させた蒸気中で加熱するため、安定した加熱が可能です。
ここで使用する不活性熱媒は温暖化などの環境破壊とは無縁であり、電子部品に使用される金属やプラスティック・ゴムなどの樹脂を腐食させるなど性能劣化の要因となる事はありません。
赤外線の8倍の熱伝達係数を持つといわれる蒸気を使用するメリットとしては、温度の低い部分に対して熱交換を行うため温度が先に上昇した部分に対しては熱交換を行いません。
また、雰囲気中は無酸素状態となるためリフロー時における酸化の心配は皆無といえます。
また、蒸気の性質からデバイス形状や材質による温度のバラつきなく低⊿tを実現できるため、温度制御に苦労する必要は皆無となります。
対流式リフロー
部品サイズや材質など条件により温度差発生
VPSリフロー
低⊿t:基板上すべての部位に均等に加熱
図1 対流式とVPSの比較
図2 VPS装置概略図
(2)VPS方式のメリット
使用電力:
熱媒を沸騰させるだけの電力でリフローが可能なため、5KW以下の低消費電力で精密な温度コントロールも不要です。
保護ガス:
蒸気中では酸化の心配がないため、N2あるいはH2などのガスを使用することなく酸化防止が可能です。
ただし、予熱工程などではガスの利用は可能です。
適応ワークサイズ:
温度差がなく熱伝達係数が赤外線の8倍である蒸気を使用するため、ワークサイズが大きい場合や金属基板など通常のリフロー装置では厳しいデバイスにも適応可能です。
もちろん、小型基板の場合でも温度設定に気を使う事なく時間調整を行うだけで多品種に適応可能です。
コールドはんだ低減:
コールドはんだの要因として最も多いのがリフロー加熱時のデバイスの各部に対する温度差が挙げられます。
VPSでは蒸気を使用する事ではんだ付けを行う端子間の⊿tを最小に抑えることができるので、対流式などと比較して格段にコールドはんだのリスクが低減できます。
また、均一に加熱出来る事から、温度差による気泡の発生を抑えてはんだの濡れ性を良くする点でも、対流式などの装置と比較してローリスクである事がわかります。
濡れ性比較:
VPSリフロー
パターン形状などによる温度ムラがない
対流式リフロー
温度ムラにより濡れにくい
図3 濡れ性
図4 VPSプロファイル例
実装部品の違い:
トランスやコネクターなど、後付け部品も同時に実装可能です。
パワーモジュールなどの成形品の実装も可能となります。
予熱工程の必要性:
リフロープロファイルにおいて、基板上に搭載された部品などの温度差による劣化や、接合部の酸素凝縮によるボイドやクラックを防ぐ事も、十分な予熱をかける理由として挙げられます。
ところが、VPSの場合には各部に対して均等に加熱するためこれらの影響は最小限にとどめられると考えられます。(図4)
つまり、予熱工程の時間短縮も可能となるのです。
(3)VPSの構造
装置の構造は図2に示すとおり簡単なものであり、メンテナンス性も良好です。
3.まとめ
多品種少量から大型基板まで高品質なリフローはんだ付けを実現。 ボイドレスはもとより、省電力、省スペース、環境対応そして操作性やメンテナンス性に優れた装置です。
半導体装置グループ・名古屋テクニカルサービスセンター 大下
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